2006年12月27日水曜日

[ドラマ] 松本清張『波の塔』

TBS「松本清張ドラマスペシャル『波の塔』」を見ました。よくできていたドラマだと思います。いままでちゃらんぽらんな役まわりが多かった小泉幸太郎が主役。ルックスはいいのに、いまひとつ頼りないというように。でも、この役で随分成長したなぁと思います。新米検事という設定も、彼の初々しさとうまく重なって良かったのかもしれません。

原作の「波の塔」は、樹海での自殺が流行するきっかけになった作品ということです。そういう紹介の仕方はどうかとも思いますが、不倫に陥ってしまうところまでは良いとして、どうして、どこにも行き場のない愛になるのか、その結果が樹海へ…というのが、現代に生きる僕にはどうしても共感できなかった。

ドラマの前半を見逃してしまったので、伏線となる部分を捉えていないせいなのかとも思いましたが、ドラマに登場する津川さんのこのコメントを読んで、ようやく相手役の頼子が樹海に入った心境を、僕がつかめなかった理由がわかりました。

「現代人には、恋愛の障害が少ない」 だから、「彼女が死のうとする理由が希薄になっている」

なるほど。携帯電話があるから連絡が取れないことでのすれ違いがない。離婚や不倫に対する抵抗感というのも、今と昔では違うと思うところがある。相手が酷い人なら離婚しても構わないという気風は、今の時代には確かにある。

恋愛ドラマって障害がある方が燃えるんですよね。大ブームを巻き起こした韓国ドラマ「冬のソナタ」では、今ではありえないだろうってくらい、毎回毎回、すれ違いや障害だらけで、昔の日本のドラマを見るようなノスタルジーに浸れるところが、古い展開だけれどもかえって新鮮に感じたものです。

障害が少ないことは悪いことではないと思っていたけれど、携帯電話がなかった頃、恋人に会うのにも、事前の約束が必要だったこととか、電話をしてもなかなかつながらない、そんなときのせつない気持ちを経験する機会はどんどん失われているんですね。

ドラマも現代風に作られているので、もちろん携帯電話は登場します。けれど、障害を減らしていた携帯電話が不通になったとき、突然、いままで見えなかった障害が立ちはだかります。うーん。これって、結局、障害で恋愛を盛り上げるという規定路線のままなのかな。今度は障害が少なくなった現代風の恋愛、そしてそこに生じるせつなさを見てみたい気もしてきます。よい小説をご存知の方は、ぜひ教えてください。

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