映画は駄作らしいと聞いていたのですが、原作の前半を読んだ限りの感想ではスリリングな展開で、ルーブル美術館の内部とか、寺院とか、映像化したものにとても興味が沸いていたので、映画の方も見てきました。
一応話を十分楽しめるように、先に原作を読みきりました。でも、英語のペーパーバックで592ページ。日本語訳の文庫本で上・中・下の3冊分という超大作です。ただでさえ英語を読むのは日本語ほどには速くできないのに、このボリューム。原作では、物語の視点がキャラクターごとにちょくちょく変わったり、キリスト教関連の見慣れない言葉が並ぶので、もう大変でした。それでも、最後まで読ませるだけの魅力はあるので、良い作品なのだと思います。
でも、この作品、ダヴィンチの作品に秘められた秘密を売りにしていますが、ダヴィンチの絵に隠された秘密なんてものは、結局はダヴィンチが真実を描いたかどうか、そもそも彼が真実を知っていたかどうかすらわからないので、あまり衝撃的ではありません。それよりも、話の中で最初に殺されるソニエールの残した謎の方がはるかに複雑で、難解なのです。その謎をキリストにまつわる歴史的な事実から紐解いていくという、その過程が楽しい作品。
それを強く伝えるためには、ソニエールの暗号好きな性格や、それを孫娘のソフィーに教育する過程があって、暗号解読が得意になったソフィー、解読に必要な宗教的知識を提供するラングドン教授のコンビが活きていたのに…。
映画では、ソフィーは扱いが低く、暗号をちっとも解いてくれません。ラングドンも、謎解きをあきらめるのが早いと思えば、オラクル(神の啓示)があったように暗号をすんなり解いてしまったり。。。暗号の数自体も時間の都合上、原作より少なくなっているのだけれど、どんな暗号が書いてあるかよく見えないし、内容を覚えきれないうちに、話がどんどん進んでいきます。話を知っていてもついていけない…。これではカンヌ国際映画祭でブーイングが起こるのもうなずけます。悪役も本当に悪意をもったただの悪役になっているし。彼らが犯罪に手を染める過程や心理を描ききっていないので、深みのない善悪の対決になってしまいました。
ずいぶん昔にジュラシックパークの続編「ロストワールド」の原作を読んでから、映画を見たときも、映画の方が話が大衆向けにチープになっていて、がっかりさせられたのを覚えています。最後にT-Rexがアメリカに上陸しなくてもいいんです。あの話は(涙)
それでも、どうしても文章だけでは想像できなかったルーブル美術館の雰囲気とかガラス張りの外観などが見られて大満足。Sirasの苦行の激しさも想像以上のものでした。教会の内部の造りとかも楽しめました。
ヒロインのソフィー役の人は「アメリ」の主役の人だったんですね。「アメリ」も見たくなりました。トムハンクスも、もうちょっと若かったら、ソフィーと恋に落ちるシーンはカットされなかっただろうに。明らかに髪が薄くなっているのが災いしています(笑) 数年前までは、恋愛映画にでていても違和感がなかったのに。 あと、ジャン・レノがでてくる映画では必ずといっていいほどがっかりします。彼の心理描写の演技は下手。「ミッションインポッシブル」の犯人役のときも最低でした…。
原作を読まずに映画を見た人のブログでは、歴史とか宗教の知識がないから理解できなかったという感想をよく見かけます。でもその本当の原因は、製作者側が、タイトルどおり、ダヴィンチのメッセージ中心の映画となるように、原作の面白い部分を摩り替えてしまったので、歴史の話をする部分と謎解きの過程が結びつきにくく、おかしな話になってしまったのだと思います。
最後に、戸田奈津子さんの字幕にはもううんざりです。key stoneを「要石」と訳したり。「キーストーン」でいいじゃない。「宇宙戦争」でも最後の重要なメッセージでとんでもない誤訳があって、なぜ宇宙人が全滅したかわからなくなっています。もう少し、原作に愛着をもった人に字幕の仕事をさせてあげればいいと思うのですが。意訳とか、セリフの時間にあわせた字幕を作るのはいいのです。英語のジョークなんて正確には訳せないし。けれど、物語の雰囲気を壊す訳は良くないと思います。ティービックも高貴な人の役なのに、最後の最後で安直な人にしてしまっていたし。
1 件のコメント:
私も今読んでます。
映画に向けて。
まだ上しか読んでないけど、ハマっちゃった。
宗教に関して全く知識がないし、ルーブルも行ったことがないので、想像できない部分もあって映像で見られるのは楽しみ。
戸田さん、結構力を持っているから他の人に来た話を取ってしまうらしいね。
それを聞いたときはがっかりしました。
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